自然のブログ記事
秋
ぼんやりと薄日のぼり きりりと冷えた窓を開ける 流れ込む金木犀の香り 僕をかすかにふるわせる凛とした朝 日が昇り天は気を失うほど高く まばらにちぎれた無数の雲 そのひとつさえ掴めそうにない むせ返るような原色の日々はすでに消え去り すっかり色の抜けてしまった水色の空 瞬きする間に日は傾きそして朱く... 続きをみる
梅
君早春の庭に来て 真白に紅に綻ぶる 漆の黒く光るよな 枝の先にて華揺るる 我君の香に誘はれ 未だ雪残る土を踏み ふるりと君に近寄れば じわり目に染む色の海 姿変はらぬ君なれど 散りゆくさだめは辛からむ 涙こぼさぬ君なれど 雨に濡れるは憂しからむ やがて風来て君見初め ひゅるると庭から連れさらる 我... 続きをみる
風
一定のリズムで風にゆれるカーテン うすいレースの向こうに見えるもや 5月にしてはひんやりとした空気が 僕の部屋をのぞいていく 少しずつ風はつよくなり 干したズボンはあわててハンガーにしがみつく ズボンを助けに窓の外へ手を伸ばすと アスファルトから昨日の雨のにおいがした 今にもぽつりときそうではあっ... 続きをみる
花
空の青さをとぷりと地面に落としてしまった 見わたすかぎりのネモフィラ畑 きっとここでは ネモフィラ以外は生きてゆけないのだろう 風にさざめきつづける青い絨毯のなかで 僕はひとりだった ただ風に揺られるために生きられないこと ぬるい日常のゼリーから出られないこと やがてネモフィラが西日におおわれ あ... 続きをみる
海
伊豆のホテルの 大きな窓から、 一日中海を眺めていた。 こんなにたくさんの塩水 一体どこから あの遠くの沖に見える岩 潮に溺れてしまいそう 波に濡れた砂浜には ぺちゃりと音がしそうな足跡 五月の海はまだ少し冷たいだろう あの波の一滴になれたら あの砂の一粒になれ... 続きをみる
早朝の青空
早朝の青空が好きだ 青の絵の具を限りなく薄め すっと上澄みを筆先に含ませ どこまでもまっすぐに引いた線のような 早朝の青空が好きだ まだつめたい空気を吸い込み 肺のあたりから青く染まる僕の体躯 そのまま空に溶け込めるような 早朝の青空が好きだ やがてふわりと朝陽が差し入り あたり一面をオレンジ色に... 続きをみる
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