2018年5月のブログ記事

  • ピアノ

    月の光に青く照らされたピアノ 全てのものが静けさの中で 夢の中に連れられた後の 温もりひとつない夜 指先でふれた鍵盤は冷たく硬く シルクのように滑らかだった こんなに美しいもの そして世俗に穢れた僕 自分を浄化するように僕はピアノを弾く 全ての鍵盤が息を押し殺して じっと僕を見据えている ピアノか... 続きをみる

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  • ぼんやりと薄日のぼり きりりと冷えた窓を開ける 流れ込む金木犀の香り 僕をかすかにふるわせる凛とした朝 日が昇り天は気を失うほど高く まばらにちぎれた無数の雲 そのひとつさえ掴めそうにない むせ返るような原色の日々はすでに消え去り すっかり色の抜けてしまった水色の空 瞬きする間に日は傾きそして朱く... 続きをみる

  • 君早春の庭に来て 真白に紅に綻ぶる 漆の黒く光るよな 枝の先にて華揺るる 我君の香に誘はれ 未だ雪残る土を踏み ふるりと君に近寄れば じわり目に染む色の海 姿変はらぬ君なれど 散りゆくさだめは辛からむ 涙こぼさぬ君なれど 雨に濡れるは憂しからむ やがて風来て君見初め ひゅるると庭から連れさらる 我... 続きをみる

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  • 一定のリズムで風にゆれるカーテン うすいレースの向こうに見えるもや 5月にしてはひんやりとした空気が 僕の部屋をのぞいていく 少しずつ風はつよくなり 干したズボンはあわててハンガーにしがみつく ズボンを助けに窓の外へ手を伸ばすと アスファルトから昨日の雨のにおいがした 今にもぽつりときそうではあっ... 続きをみる

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  • 空の青さをとぷりと地面に落としてしまった 見わたすかぎりのネモフィラ畑 きっとここでは ネモフィラ以外は生きてゆけないのだろう 風にさざめきつづける青い絨毯のなかで 僕はひとりだった ただ風に揺られるために生きられないこと ぬるい日常のゼリーから出られないこと やがてネモフィラが西日におおわれ あ... 続きをみる