ピアノ

月の光に青く照らされたピアノ
全てのものが静けさの中で 夢の中に連れられた後の
温もりひとつない夜


指先でふれた鍵盤は冷たく硬く
シルクのように滑らかだった
こんなに美しいもの そして世俗に穢れた僕


自分を浄化するように僕はピアノを弾く
全ての鍵盤が息を押し殺して
じっと僕を見据えている


ピアノから溢れ出る音の金色の粒子は
僕の足元にしゃらしゃらと落ちる
そうして僕の影をすっかり覆ってしまった


気が付けば壁も窓も窓の外の木も空も
みんな僕を見ていた 表情もなく
輝く粒子は僕の影を奪って消えていた


僕はぐったりとピアノに体をもたれ
肺をじんじんと痛いほど冷やす空気を吸った
今にも風に千切れそうな影が窓の外を歩いていた