夕暮とある人

暖かさと冷たさを含んだ秋の風が
君の髪を撫でる 
糸よりも細い君の金色の髪が
芝生の緑に美しく映えて揺れている
早くも陽は西に傾き
君の疲れた顔を燈色に染める


僕たちは互いに言葉を捨てたまま
ただ夕日からいつまでも目を離せないでいた
残された時間はもう僅かであると分かっているのに


耐えられなくなった僕は
君に気付かれぬようそっと君の横顔を見た
君は出会った頃と何一つ変わらぬまま
繊細で 美しく すべてを諦めることに慣れていた


君が音もなく流す涙を
僕は止めてやることができなかった
君が声を上げて流す涙を
僕は止めてやることが出来なかった
何もかも無防備に信じる君は
生きていくには純粋すぎた


人生で最も深く愛する者を
僕はたったひと時でさえ救うすべを持たない
何にも代えられぬ君の隣で僕も
物言わぬ夕日と同等に無力だった